はじめまして、肝ったママです。

 2012年4月から、全国の母子手帳に便色カードが収載されました。これは、前・国立成育医療研究センター病院長の松井陽先生が、胆道閉鎖症の早期発見のために、数十年前から研究開発を重ねてきたものです。

灰白色便だけでなく、淡黄色便も要注意です

 胆道閉鎖症は、生後まもなく何らかの原因により、胆道がじょじょに閉鎖し、胆汁が流れなくなる病気です。医学教科書などでは「胆道閉鎖症の患児は灰白色便を排泄する」との記述が見受けられますが、私たち患児の母親が実際に見た便の色は「レモン色・クリーム色・薄い黄色・薄い緑色」など、薄っすらと色付いている便でした。
 しかし、多くの母親はその便の色に不安を持ち、受診をすると「真っ白ではないから大丈夫」と帰される経験がありました。「胆道が閉鎖しているから=まったく胆汁が流れない=便に色が付かない=灰白色便」との考えからの診断かも知れませんが、胆道閉鎖症は「一気に胆道が閉鎖する」わけでもなく、「完全に閉鎖している」わけでもない場合もあります。何らかの原因により、胆道が少しずつ閉鎖していく過程では、僅かながらも胆汁は流れているので、「薄く」便に色はついているのです。また、一説には血液の中のビリルビンが腸の壁から滲みでて、それが着色している可能性もあると言われております。
 以上の経験、説明からも「胆道閉鎖症の患児は必ずしも灰白色便を排泄しない」ことを、医療関係者の方に知ってもらいたいと思います。

黄疸は「母乳性黄疸」と「病的黄疸」があります

 母乳を飲んでいると黄疸が出るために、胆道閉鎖症の患児は黄疸が「母乳性黄疸」を間違えられることがありました。ミノルタ計だけでは「母乳性黄疸」と「病的黄疸」の見分けはつけられず、「直接ビリルビン」を知るにはどうしても採血に頼る他ありません。また、尿に含まれる「硫酸抱合型胆汁酸」を計る「USBA検査」もありますが、こちらはコストがかかる上に、結果が出るまでに数日かかります。私たちとしては「VK欠乏症」による「脳内出血」などのリスクを回避するためには、一刻も早く血液検査をされるのが望ましいと考えております。赤ちゃんの採血は難しく、現場の小児科医にもご負担がかかるとは思いますが、黄疸のほかにも淡黄色便や茶褐色尿などの症状も同時に見受けられる場合は、やはり採血検査をしてD−Bilや肝機能を調べてほしいと思っております。母親は、たしかに生後間もない赤ちゃんが採血されて痛がるのを見るのは辛いですが、「病気かも?」とモヤモヤする方がよっぽど辛く、また発見が遅くなった場合に、親は「もっと早く気づいてあげれば…」と後悔の念でいっぱいです。ですので、採血することの意味を親に説明し、疑念を晴らす意味でもよろしくお願いします。

茶褐色・濃い色の尿はビリルビン尿の可能性があります。

 私たちのメンバーの中で、胆道閉鎖症のお子さんは「濃い黄色」や「茶褐色」の尿をしています。新生児の尿が「無色透明」だということを知っている母親も少なく、脱水かな?という程度の認識で気づかないこともあります。しかし、これは腸へ排泄されないビリルビンが腎臓の方から尿によって排泄されるため、濃い黄色の尿となります。黄疸が母乳性黄疸か、病的黄疸で一見わからなくても、合わせて濃い色の尿をしていると要注意です。
三大症状をぜひ合わせて観察・診察願います。
 灰白色便や淡黄色便はウィルス性胃腸炎、黄疸は母乳性黄疸、茶褐色尿は脱水と、これら症状単一で診ると他の疾患が考えられることもありますが、この三つの症状が2つ以上出たり、全部出たりすることがあります。その時は胆道閉鎖症や乳幼児肝疾患を疑って下さい。とくに生後3ヶ月ぐらいまでは、これらの症状が一定期間続いた場合は、採血を行い、早急に鑑別を行って下さい。

 胆道閉鎖症は生後60日内の葛西手術(肝門部空腸吻合術)が好ましいとされます。早期に発見し、適切な治療を行うことで、その予後が大きく変わりますし、VK欠乏症による内出血のリスクを回避することができます。