はじめまして、肝ったママです。
胆道閉鎖症や肝疾患を持つお子さんは、生後まもなくから、手術や入退院を繰り返しております。親としては、一万人に一人の難病と言われたり、大きな手術や移植を経験したり、不安に押しつぶされそうな中、子どもを必死に育ててきました。そのため、入園・入学は、大きな喜びで迎えるとともに、集団生活に入っていく我が子について、大きな不安を抱えております。
また、肝移植をしたお子さんは、拒絶反応*を防ぐための免疫抑制剤*を服用しているため、感染症に罹ると重症化する恐れがあります。そのため、集団生活については、感染症という面でも人一倍気をつけなければならないことがあります。
手術や入退院を繰り返していたり、感染症に気をつけるため、幼少期は同世代の子どもとあまり遊べなかったお子さんにとっても、保育園・幼稚園や学校は、楽しみとともに不安を抱えての通園・通学だと思います。
こうしたお子さんを迎える側の教職員の方々に、お願いがあります。
(1)腹部の手術痕について
胆道閉鎖症や肝疾患のお子さんは、多くが手術を受けております。中には、何度もお腹を開けているお子さんもおられます。手術の傷が目立たないお子さんもいますが、中にはかなり大きな傷痕のあるお子さんもおられます。家庭によっては、子どもに傷痕の説明をしているところもありますので、気にしないお子さんもいますが、中には気にしてしまうお子さんもおられます。着替えやプールの時に、お友達に傷痕がみられてしまうこともあります。他の子どもが傷痕について、からかったり、いじめたりすることもなかにはあるかも知れません。傷痕について、子ども達の間で問題があった時は、まず保護者とお話の場を持って下さい。病気について、先生から事情を話すのか、保護者から子ども達に話すのか、話し合いながら、子どもを見守ってあげて下さい。
(2)感染症について
胆道閉鎖症や肝疾患のお子さんは、これらの基礎疾患があることで、予防接種が打てない場合があります。感染症が引き金となって肝臓の機能が影響されたり、合併症が起こることもあります。
また、肝臓移植をされたお子さんは、移植された肝臓の拒絶反応をを予防するために、免疫抑制剤*を服用しております。この場合は予防接種打っていても、抗体が出来なかったり、予防接種自体受けることが出来ないお子さんもおられるため、感染症には人一倍注意する必要があります。(感染症によっては、事前に予防薬投与をする場合があります。)
そのため、園や学校で感染症(特に学校保健安全法などで定められている感染症)が流行した時は、その情報を保護者の方にお伝え下さい。
移植されたお子さんの場合、動物などと触れ合うことも気をつける場合があります。国立成育医療研究センターでは、移植を受けたお子さんの動物との関わりについて、小冊子を作成しています。ご参考にしてください。
国立成育医療研究センター臓器移植センター:『臓器移植を受けたお子さんとペットの生活 Ver.1.0』
(3)体育・運動について
一般的に胆道閉鎖症や肝疾患のお子さんは、手術によって元気になった場合、運動の制限はほとんどありません。しかし、何度も腹部を開腹しているお子さん、肝臓や脾臓が腫れているお子さん、移植しているお子さんは、肝臓へ強い衝撃や圧迫を避けるために、鉄棒などを医師より制限されてる場合もあります。これは、鉄棒によって、肝臓に全体重がのしかかることにより、血管が圧迫されて血流が詰まったりする場合があるからです。
運動中や遊びの中で腹部を強打した時は、様子を見て、必要なら保護者にご連絡ください。
運動制限については、保護者からご連絡があると思いますが、園や学校で判断できない場合は、お手数ですが、保護者にご確認をお願いします。
(4)熱中症・脱水対策について
気温の高い日などは、屋外室内を問わず、熱中症・脱水には十分配慮いただきたいと思います。気温が高くになるにつれ、体温も高くなり熱中症、脱水の症状がでます。脱水をすると、まずは普段服用中のお薬の血中濃度が影響されることがあります。また、脱水は肝臓に負担をかけるので、気温の高い日の運動時などには、子どもに水分補給するよう配慮をお願いします。
(5)体調管理について
保育園などでは、年齢の低いお子さんをお預かりしている場合もあると思います。体温などは検温で観察していると思いますが、排泄した時に、もし便の色が薄くなっていたり、マーブルのような色になった場合、お熱がなくても保護者にお伝え下さい。
(6)他の保護者への周知について
保護者側も、入園・入学の際に他の保護者に話すべきか、悩んでいる方もおられます。就学前の面接の際や入園入学後に個別に時間を持って、一度保護者からお話を聞いていただけると、保護者側としては大変ありがたいです。
心臓病とは違い、肝臓病のお子さんは、医師から特別に言われない限り、「普通の生活」を送っております。ドッジボールやサッカーをしたり、山登りやプールなども普通のお子さんと同じように楽しんでます。基本は他の普通のお子さんと同じように見守ってください。
一部のお子さんのなかには、在園中・在学中に病状が悪化したり、合併症が出たりして、長期入院を余儀なくされるお子さんもいると思います。その際には、保護者と連絡を取り合い、復学時のサポートやケアをお願いします。国立特別支援教育総合研究所では、病気の子の理解のための小冊子を作成してます。ご参考にしてください。
保育士さんや先生方には、ご負担をおかけしますが、私たちは我が子が元気に登園・登校するだけでも、何よりの喜びです。と同時に、大きな不安も抱えておりますので、ぜひ保育士さんや先生方のご協力をお願いします。よろしくお願いします。
*拒絶反応:移植された臓器が体内で免疫システムに攻撃されること。
*免疫抑制剤:拒絶反応を防ぐために免疫を抑える薬。