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患者の治療は主治医とよくご相談ください。
便色カードで赤ちゃん守れ(2012.6.19)
便色カードで赤ちゃん守れ
便色カードで赤ちゃん守れ(47NEWS)
肝臓から腸に胆汁を運ぶ管が生まれつき、または生後間もなく詰まってしまうと「胆道閉鎖症」という病気が引き起こされる。赤ちゃん約1万人に1人がかかるまれな病気だ。放置すれば肝硬変が進行し命にかかわる。できるだけ早く発見し、手術を受けることが長期生存への道だが、治療が遅れるケースが後を絶たない。この病気には便の色がうすくなる特徴がある。赤ちゃんの便と色見本とを見比べて、早期発見を助ける「便色カード」が4月から母子健康手帳にとじ込まれた。
▽うすい黄色
健康な赤ちゃんの便は通常、生後48時間以内は緑がかった黒色で、同2~4日目ごろは黒緑色と黄色が混じり、次第に黄色味が強くなる。さらに乳汁をたくさん飲むようになると、黄色から茶色へと変化していく。
一方、胆道閉鎖症の赤ちゃんの約70%は生後4週までに、残る約30%も2カ月までに、便の黄色味がうすい淡黄色便の症状が現れる。便に色を付ける"材料"は胆汁。うすい色は胆汁の流量が少ないことを表している。
便色カードは、灰色がかった白色から茶褐色まで7段階の色を示し、保護者が赤ちゃんの便と見比べられるようにした。生後2週、1カ月、1~4カ月の少なくとも3回チェックし、実際の便がどれに最も近いか、それぞれの色にふられた1~7番の番号を記入する。もしもうすい方の1~3番に近ければ、一日も早く小児科医などの診察を受けるよう勧めている。
▽葛西手術
従来の母子健康手帳にも、便の色について注意を促す記述はあった。 だが、色調の見本はなかった。「灰白色とかうすい黄色と言葉で言われても、人によって思い浮かべる色は千差万別です。見本と突き合わせて番号を記入してもらえば、あいまいさを排除できる。危険信号を確実に医師に伝えられます」とカードを考案した松井陽・国立成育医療研究センター 病院長(小児科学)は話す。
松井さんによると、胆道閉鎖症 は原因不明の炎症によって胆汁の通り道である胆管が閉塞する。胆汁は腸で脂肪の消化吸収に重要な役割を果たすが、閉塞のため肝臓内にたまると、組織を傷めて肝硬変を起こす。淡黄色便のほかに黄疸も現れるが、生後1カ月ごろは見逃されやすいという。
治療では、閉塞した胆管を切除して肝臓と腸をつなぐ、日本生まれの「葛西手術」が行われる。問題は、手術時期によって、その後の生存率に大きな差が出ることだ。
▽効果を確認
「生後60日までに手術すれば術後20年の生存率は43%、61~90日では33%、91~120日では25%、121~150日では7%と低下し、151日以降ではゼロ。だからこそ早期発見が大切なのに、60日以内に手術を受ける赤ちゃんは全体の約40%にすぎません」と松井さんは嘆く。
松井さんら厚生労働省研究班は、2007年までに便色カードを先行配布していた8道県1政令指定都市について早期発見の効果を分析した。「例えば栃木県では、9年間で16人の患者が発見され、生後60日以内の手術の割合は75%まで上昇しました」(松井さん)
こうした結果を受け、厚労省は本年度から、母子健康手帳を作成する市区町村に便色カードのとじ込みを義務付けた。カードの生命線は色の精度にあるため、印刷方法などを厳密に指定。妊婦への交付時に使い方を説明することも求めている。
移植で切除の肝臓 細胞分裂より、肥大で再生(2012.6.1)
移植で切除の肝臓 細胞分裂より、肥大で再生
肝臓は切り取っても数週間で元の大きさに戻りますが、これは細胞が分裂して増えるよりも、一つ一つの細胞が大きくなることによるとの研究結果を、東京大分子細胞生物学研究所の宮島篤教授らが解明しました。
◇移植で切除の肝臓 細胞分裂より、肥大で再生(つなごう医療:中日メディカルサイト)
東大解明 安全な手法開発に道
肝臓は切り取っても数週間で元の大きさに戻るが、これは細胞が分裂して増えるよりも、一つ一つの細胞が大きくなることによるとの研究結果を、東京大分子細胞生物学研究所の宮島篤教授らが1日付の米科学誌カレントバイオロジー電子版に発表した。
肝臓は高い再生能力を持つため、親子間などでの生体移植が行われている。宮島教授は「細胞の分裂よりも肥大が重要なことが明らかになった。再生の仕組みを探ることで、より安全な移植方法の開発につながるのではないか」と話している。
実験用のマウスの肝臓の7割を切除すると、通常は1週間で元の重さと機能を回復する。宮島教授らは、この間の細胞分裂の回数を測定したが、重さや機能を回復するには不十分なことが判明した。そこで細胞の核と輪郭の大きさを調べたところ、約1.5倍になっていることが分かった。
さらに、切除する肝臓を3割に減らすと、細胞は分裂せず、肥大だけによって再生していることも判明。肥大で足りない場合にのみ、細胞分裂して再生している可能性があるという。
通常の肝臓の細胞(左)と、肥大した再生後の細胞(右)の顕微鏡写真=宮島教授提供
母子手帳10年ぶり改訂 最高の育児本、夫婦で熟読(2012.4.19)
母子手帳10年ぶり改訂 最高の育児本、夫婦で熟読
母子手帳10年ぶり改訂 最高の育児本、夫婦で熟読(読売新聞ヨミドクター)
母子の健康を守るため、妊娠した母親に市区町村が交付する母子健康手帳(母子手帳)。その内容が今月、10年ぶりに大幅に改められた。難病の早期発見のために赤ちゃんの便の色見本を載せたり、両親が育児に積極的に取り組めるように自由記入欄を増やしたり。手帳を上手に活用し、健康管理や育児に役立てたい。
母子手帳は母子保健法に基づき、市区町村に妊娠を届け出れば、無料でもらえる。妊婦や就学前までの子どもの健診結果や予防接種などを記録でき、食事の目安や子どもの発育に応じた育児方法、事故予防などの情報も載っている。
厚生労働省によると、母子手帳の元となる「妊産婦手帳」ができたのは1942年。65年に母子保健法が制定され、現在の母子手帳が制度化された。同省が、医療の発展や母子を巡る環境の変化などを踏まえながら、ほぼ10年ごとに手帳の内容を改訂している。
手帳前半には、健診の記録欄など同省が省令で定めている全国共通の内容が載り、後半部分には、同省の示した例を参考に、市区町村が育児の注意点などの情報を独自にまとめている。
今回の改訂で注目されるのは、生後すぐ治療すれば改善が見込まれる「胆道閉鎖症」の早期発見のため、赤ちゃんの便の状態を示す7色の見本を掲載したこと。保護者が見本と見比べ、便の色で赤ちゃんの健康状態を確認できる。
また、高齢の妊婦が増えていることなどを受けて、妊娠中に医師に相談すべき具体的な症状が掲載され、自分の健康管理を主体的に行えるように自由記入欄が大幅に増えた。妊娠中の自由記入欄は、2か所から9か所に増え、子どもの誕生日に両親がメッセージを書く欄も新しくできた。
日本子ども家庭総合研究所(東京)名誉所長の柳沢正義さんは、「自由記入欄には、体調で気になることや、赤ちゃんへの夫婦の気持ちを書き留めておくとよい」と話す。医師に尋ねたいことを手帳に書いておけば、健診の際に忘れない。また、父親も我が子への気持ちを書いておけば、親の自覚が芽生えるという。
4月下旬、千葉市で第2子用に新しい母子手帳を受け取った女性(32)も、「子どもに伝えたい気持ちなどを手帳に書き留めておきたい」と話す。
柳沢さんは「母子手帳は、母親のSOSを周囲に気付かせる役目も果たす」と指摘する。新しい手帳では、子どもの発育を記録する欄に、「相談相手の有無」「不安や困難を感じるかどうか」などの質問項目が増え、手帳を見た医師や助産師が、母親のSOSに気付いて支援しやすくなる。
松平小児科(東京)院長の松平隆光さんは、母子手帳について、「厳選された重要な情報が詰まった最高の育児バイブル。夫婦で熟読してくだい」と助言する。そして、「命の誕生と成長の記録でもある。大きくなった子どもと一緒に手帳を眺めると、命の大切さを語り合うきっかけにもなります」とも話している。
「胆道閉鎖症」早期発見に力(2011.1.5)
「胆道閉鎖症」早期発見に力
「胆道閉鎖症」早期発見に力(読売新聞ヨミドクター)
目的と活動
「胆道閉鎖症」を患う子どもを持つ母親らが集う会。2009年9月に結成し、会員は全国に約30人。胆道閉鎖症は、脂肪の消化や吸収を助ける胆汁の通り道(胆道)が閉鎖し、胆汁が肝臓から十二指腸に流れなくなる病気。胆汁が肝臓にたまって肝硬変などになり、命を落とすこともあり、早期発見が重要だ。
指標の一つが便の色。クリーム色やレモン色など薄い色だとこの病気の可能性がある。会は、便の色を判断する「便色調カラーカード」を、全国に普及させる活動を主に行っている。代表の酒井有理さん(36)は「カードが新年度から母子健康手帳に掲載される。病気が早期発見できるよう、より一層、啓発に取り組んでいきたい」と話す。
母子手帳に「うんちの色」 胆道閉鎖症早期発見で(2011.11.1)
母子手帳に「うんちの色」 胆道閉鎖症早期発見で
母子手帳に「うんちの色」 胆道閉鎖症早期発見で(つなごう医療:中日メディカルサイト)
厚労省が掲載方針
白っぽいうんちを手掛かりに胆道閉鎖症の赤ちゃんを早期発見するため、厚生労働省の検討会は31日、妊婦が自治体から受け取る母子手帳(母子健康手帳)などに赤ちゃんの便の色を載せる方針をまとめた。
厚労省によると、白っぽい色から濃い茶色までの7色を示し、実物と比べてもらう。色の見本は母子手帳本体にとじ込むか、特別なカードを作って手帳と一緒に使えるようにする。新しい様式の手帳は、来年4月以降に発行される見通し。
胆道閉鎖症は、肝臓で作られた胆汁の通り道の胆管が詰まって流れなくなる病気。赤ちゃんの1万人に1人がかかり、早めの手術が必要になる。
脳死肝移植 堀実可さん、1歳時に豪州で 匿名のドナーに感謝「3人」の挙式(2011.5.8)
脳死肝移植 堀実可さん、1歳時に豪州で 匿名のドナーに感謝「3人」の挙式
2011年5月8日 提供:毎日新聞社
◇隣に国旗「ドナー席」 「一生懸命生きる」誓いの手紙
1歳の時にオーストラリアで脳死肝移植を受けた堀実可さん(23)が7日、熊本市で結婚式を挙げた。匿名のドナーにも感謝を伝えたい。堀さんは新郎新婦の隣にドナー席を設け、オーストラリアの国旗を飾り「3人」で式を迎えた。【結城かほる】
堀さんは生後まもなく先天性胆道閉鎖症と診断された。当時、国内では移植を受けられなかったため、全国からの募金でオーストラリアに渡り、移植手術を受けた。
手術を受けた9月17日は「ドナーの日」として毎年、家族で教会に行ったり寄付を続けてきた。結婚式ではドナーの席を作ろうと、子供のころから夢見ていた。夫の今村信皓さん(23)とは高校生の時に出会った。結婚式の相談では「ドナーがいなければ二人が出会うこともなかった。生かしてもらった感謝を形にするのはすばらしいこと」と賛成してくれた。
式には病院関係者や、募金活動で出会い、20年以上交流する支援者も出席した。堀さんは「ドナーへの手紙」を読んだ。「お礼を言いたいが、それはかなわない。せめて後悔しないよう一生懸命生きます。あなたと臓器提供を許してくれたあなたの家族に感謝します」
堀さんと今村さんは現在、名古屋市で暮らす。次の夢は「母親になること」。免疫抑制剤の長期服用のため、妊娠・出産にはリスクが伴うが「私が生きて発信し続けることが、移植への理解につながる」。夢はあきらめないつもりだ。
胆道閉鎖症の早期発見訴え 生後2カ月以内の治療が重要(2009.12.9)
胆道閉鎖症の早期発見訴え 生後2カ月以内の治療が重要
胆道閉鎖症の早期発見訴え 生後2カ月以内の治療が重要(つなごう医療:中日メディカルサイト)
患者の母親ら活動「便色チェックのシート普及を」
胆道閉鎖症の早期発見を訴える加藤貴子さん=中日新聞社で 生後2カ月以内の早期発見と治療が重要といわれる小児の難病「胆道閉鎖症」。認知度が低く、赤ちゃんの便や皮膚の色で判断する限界から発見が遅れがちな現状を変えようと、中部、関東の患者の母親など27人でつくる「肝ったママ’s」が活動を始めた。便の色を調べるカラーシートの普及を求め、医療関係者にも協力を呼び掛けている。(福沢英里)
名古屋市中区の主婦(27)の長男(1つ)が、肝臓と腸管をつなぐ手術を受けたのは生後七十三日。生後五週で便の異変を確認しながら、育児本の写真で見た胆道閉鎖症の時の便と、長男の便の色が異なり、発見が遅れた。長男は手術後も状態がなかなか安定しない。「育児本の便の写真が違っていたら早く気付いてあげられた」と悔やむ。
愛知県豊山町の加藤貴子さん(34)の長女は生後二カ月の時、胆道閉鎖症の合併症で、脳出血を起こして亡くなった。便の色の薄さに気付いていたのに、「元気でおっぱいを飲み、体重も増えている」と気に留めず、手遅れになった。
その後、加藤さんは、胆道閉鎖症をいち早く見つけるため、白、黄、緑など七色の便の色見本が印刷された「便色カラーシート」を配布している自治体があると知り「早期発見の手だてがあるのに、地域差で命が左右されるのはおかしい」との思いを募らせた。
胆汁の成分「ビリルビン」が腸管に排出され、色がつく健康な赤ちゃんの便は黄色味を帯びている。ビリルビンが排出されない胆道閉鎖症の場合は、便が次第に薄くなり、続いて白っぽく変色する。白ではすでに症状が進んでいることもあり、クリーム色やレモン色といった色も注意が必要だ。
カラーシートを導入している北海道、石川、岐阜など八道県では、母親に母子手帳と一緒に配り、注意を促している。一カ月健診の際に、自分の赤ちゃんの便に近い色にチェックを入れたカラーシートを産院に提出する仕組み。尿検査で発見する方法もあるものの、実施するのは個人の産院が多く、普及していない。
加藤さんらは、受診の目安になる症状をまとめた啓発チラシも作成。「産院での退院指導や保健師の赤ちゃん訪問の時に活用してほしい。『便の色が薄いのは肝臓の病気を疑う』と知って」と話す。
会のホームページ =http://www3.to/children-liver
(注:現在はhttp://kimottamama.info)
【胆道閉鎖症】 肝臓と十二指腸をつなぐ管の「胆道(胆管)」が詰まって、肝臓で作られた胆汁を腸に排出できなくなる病気。国内では約1万人に1人の割合で発症。胆汁が肝臓に蓄積されると、皮膚や白目の色が黄色くなる黄疸(おうだん)が目立ち、肝機能が低下する。治療は手術か移植に限られる。