こちらでは、肝臓の移植をして、退院した後の生活について書いております。症状や経過は人それぞれですので、あくまでも参考にしてください。個別の症状や経過については、主治医にお聞きください。
患者の治療は主治医とよくご相談ください。
退院後の生活は何に注意すればいい?(レシピエント編)
退院後の生活は何に注意すればいい?(レシピエント編)
・生涯外来通院が必要になります。退院直後は週に一度、 その後徐々に間隔を開けていき、紹介元の病院と交互に通う場合もあります。外来では通常、血液検査やおなかのエコー(超音波)検査がなされ、CT検査も適宜行われます。
・免疫抑制剤を時間と量を守って服用します。
・食事に関しては、一定期間は生ものを避けるなどの指示がありますが、1年もたてばほとんど制限もなくなります。 ただし、免疫抑制剤の血中濃度を高めてしまうグレープフルーツ、逆に下げてしまう西洋オトギリ草(別名セントジョーンズワート、ハーブの一種)は食べることができません。
・手洗い、うがい、歯磨き、マスクの着用などの感染対策をしっかりする必要があります。
・主治医との相談の上決めていきますが、幼稚園へは半年程度、学校へは3ヶ月程度で復学できます。
・予防接種については、服用している免疫抑制剤の種類・用量によって効果が違い、また、生ワクチンと不活化ワクチンでは、それぞれのリスクが違うため、主治医の指示の下、不活化の季節性インフルエンザワクチンなどを適宜接種します。
退院後の生活は何に注意すればいい?(ドナー編)
退院後の生活は何に注意すればいい?(ドナー編)
・退院後1週間、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年後に外来を受診します。検査内容は、通常血液検査と腹部エコーです。医療機関によってはその後も1年毎に受診をします。
・特に食事に関する制限はなく、バランスの良い食事をするように指示されます。飲酒はなるべく3ヶ月は控えたほうがよいそうです。
・術後の体力回復状況、仕事の内容にもよりますが、およそ1ヶ月から3ヶ月で復職が可能です。
・開腹手術をすると、癒着が起こりやすくなり、ドナーでも腸閉塞などになる可能性があります。
移植後、ドナーの肝臓はどうなるの?
移植後、ドナーの肝臓はどうなるの?
約3ヶ月ほどで元の大きさに戻ります。
一部を切除して残った肝臓は、約3ヶ月ほどで元の大きさに戻ると言われております。2012年の東大の研究では、残った肝臓は細胞が分裂ではなく、一つ一つの細胞が大きくなっていると報告されております。
元の大きさに戻った後は、ほとんどのドナーの方が、通常の生活を送っております。
【参考】移植で切除の肝臓 細胞分裂より、肥大で再生。(2012.6.1 つなごう医療 中日メディカルサイト)
東大解明 安全な手法開発に道
通常の肝臓の細胞(左)と、肥大した再生後の細胞(右)の顕微鏡写真=宮島教授提供
肝臓は切り取っても数週間で元の大きさに戻るが、これは細胞が分裂して増えるよりも、一つ一つの細胞が大きくなることによるとの研究結果を、東京大分子細胞生物学研究所の宮島篤教授らが1日付の米科学誌カレントバイオロジー電子版に発表した。
肝臓は高い再生能力を持つため、親子間などでの生体移植が行われている。宮島教授は「細胞の分裂よりも肥大が重要なことが明らかになった。再生の仕組みを探ることで、より安全な移植方法の開発につながるのではないか」と話している。
実験用のマウスの肝臓の7割を切除すると、通常は1週間で元の重さと機能を回復する。宮島教授らは、この間の細胞分裂の回数を測定したが、重さや機能を回復するには不十分なことが判明した。そこで細胞の核と輪郭の大きさを調べたところ、約1.5倍になっていることが分かった。
さらに、切除する肝臓を3割に減らすと、細胞は分裂せず、肥大だけによって再生していることも判明。肥大で足りない場合にのみ、細胞分裂して再生している可能性があるという。
拒絶反応とはどういう状態ですか?
拒絶反応とはどういう状態ですか?
移植をうけられた患者さんの体内の免疫システムが新しい肝臓を外部からの異物と判断して攻撃しようとすることです
拒絶反応とは、移植をうけられた患者さんの体内の免疫システムが新しい肝臓を外部からの異物と判断して攻撃しようとすることです。移植後の7〜90日の間に起こることが多いです。
【症状】
(1)発熱:38度以上の高熱、37.5度以上の発熱が24時間持続する
(2)腹痛:特に上腹部の痛み
(3)疲労感・不快感:ぼーっとした感じになる
(4)腹部が大きくなる(腹水の出現)
(5)食欲がなくなる
(6)尿の色が濃くなる
(7)便の色が薄くなる
(8)身体がかゆくなる
(9)黄疸(目や皮膚)
(10)風邪のような症状
*以上の症状が出たことで、すぐに「拒絶反応」というわけではありません。医師の診察が必要です。
拒絶反応は、感染症や血管あるいは胆管の閉塞などと区別(鑑別)する必要があります。そのため、入院して精密検査などをして、場合によっては治療が必要になります。拒絶反応か起きているかどうか把握するにも、きちんと術後の外来検診を受けることが大切です。
拒絶反応の検査や治療はどんなものですか?
拒絶反応の検査や治療はどんなものですか?
外来や入院して検査を受けることで拒絶反応があるかないか調べます。
移植して退院した後は、生涯通院します。これは拒絶反応が起きているかどうか、外来で検査して診察する必要があるからです。拒絶反応は外来での検査と入院での検査があり、検査して拒絶反応が診断されたら、治療をします。
【拒絶反応に対する診断に必要な検査】
(1)血液検査
(2)超音波検査(エコー)
(3)X線検査(レントゲン)
(4)肝生検(肝バイオプシー)
このうち、(1)と(2)は通常の外来で行う検査です。(1)や(2)の結果次第で(3)が追加されることがあり、また(4)は麻酔を施し、針を刺して行う検査なので、入院が必要です。
検査を経て、拒絶反応と診断されたら治療が始まります。拒絶反応に対する治療は以下があります。
【拒絶反応に対する主な治療法】
(1)免疫抑制剤の量の調整
(2)ステロイド内服薬(プレドニン)の調整
(3)副腎皮質ホルモン(ステロイド)の静脈大量投与(点滴)
(4)その他の免疫抑制剤の投与
このうち、(1)と(2)は外来での調整となり、通院間隔を短くして血液検査で経過観察をすることが多いです。(3)と(4)は入院しての治療となります。
拒絶反応は早期に対応することが大切です。そのためにも、処方されたお薬はきちんと服用し、外来診察もきちんと受けましょう。
免疫抑制剤について
免疫抑制剤について
免疫抑制剤は拒絶反応を防ぐための大切なお薬です。
移植を受けられると、身体の免疫システムは新しい肝臓を異物と判断して攻撃しようとします。これが拒絶反応です。この拒絶反応が続くと新しい肝臓がダメになってしまいます。そのため、免疫抑制剤を飲んで、拒絶反応を防ぎます。現時点の医学では、まだ新しい肝臓とレシピエントの免疫システムがなじんで拒絶反応をおこさない状態(免疫寛容)を作り出すことは研究段階のため、移植した人は免疫抑制剤を生涯服用することが原則となっております。
免疫抑制剤は少なすぎると拒絶反応が起こります。反対に多すぎると病原菌に対する抵抗力が低下して、感染症を引き起こしたり(日和見感染症など)、副作用が出てきたりします。そのため、きちんと定められた量と定められた時間に服用し、定期的に外来通院することが大切です。
免疫抑制剤は、術後に調整して、服用する種類と量は人それぞれです。
主な免疫抑制剤
主な免疫抑制剤
優秀な免疫抑制剤の開発で、移植の成績が上がりました。いくつか主な免疫抑制剤を紹介します。
免疫抑制剤は、色んな種類があります。人それぞれの症状や体質に合わせて、種類や分量が定められてます。
(1)プログラフ(成分名:タクロリムス 開発名:FK506)
プログラフは1980年代に筑波山の麓の土壌から発見された菌から開発されました。開発名のFK506のFは開発した藤沢製薬(現アステラス製薬)の頭文字だそうです。この薬は血液中の薬剤濃度(血中濃度・トラフ)のコントロールがシビアなため、服用量は副作用の程度、拒絶抑制効果を見ながら、血液中の濃度をモニターして、個々の状態に応じて調整されております。通常は12時間毎の決められた時間に内服します。(現在は、24時間毎服用で同じ成分のグラセプターというお薬も開発されてます。)
【参考】学術情報/肝移植に関する情報/タクロリムス(FK506)開発物語
(2)プレドニン(ステロイド)
ステロイドには、抗炎症作用、抗アレルギー作用のほかに様々な刺激に対する生体の反応を抑える働きもあります。免疫抑制剤の調整の前に、ステロイドを投与することで拒絶反応が改善されることもあります。
ステロイドは副腎皮質ホルモンと呼ばれてますが、投与されている量をすぐに中止することは危険です。医師の指示に従い、徐々に減らしていくことになります。
(3)セルセプト
セルセプトは主に腎移植などで使われている免疫抑制剤です。プログラフでは副作用が強すぎたり、一剤だけでは拒絶反応が抑えられないなど、それぞれの状態を考慮して投与されることがあります。こちらも、決められた量を守って服用してください。
免疫抑制剤はこの他にもいろいろな種類がありますが、詳しくは主治医や薬剤師にお聞きください。
免疫寛容とは
免疫寛容とは
免疫寛容(トレランス)とは肝臓移植で言えば、移植された新しい肝臓が身体の免疫システムの攻撃されることがない状態、または攻撃されないことです
臓器移植をして最大の関門は、移植された肝臓が身体の免疫システムに異物と認識され、攻撃されることです。これを拒絶反応といいます。この拒絶反応をいかに抑えるかが臓器移植が始まった頃の最大の課題でした。その後、優秀な免疫抑制剤が開発され、特にプログラフが開発されたことは、この拒絶反応を抑え、移植された肝臓の定着率が高まり、移植の生存率を高めることとなりました。
しかし、免疫抑制剤を服用することは、生涯続くものであり、また免疫抑制剤自体の副作用や、免疫抑制することで感染症に罹りやすくなったり、重症化してしまうリスクが高まることになりました。
そこで、移植された肝臓が異物ではなく、身体の一部として見なされ、免疫システムから攻撃されないように人為的にできないものか、現在研究段階にあります。この移植された臓器が免疫システム攻撃されない状態を免疫寛容(トレランス)といいます。
免疫寛容の研究について、現在腎臓移植の方で臨床に向けつつ研究がすすめられております。一部の肝臓移植でも免疫寛容の試みが始まっているそうです。しかし、まだ研究段階であり、すべての肝臓移植に適応されておりません。今後の研究が期待されます。
【参考】NHKクローズアップ現代:夢の治療が始まった〜免疫を制御する”医療革命”
薬の飲み合わせについて
薬の飲み合わせについて
薬によっては飲めないものもあります。
免疫抑制剤(プログラフ・グラセプター)はマクロライド系の抗生物質とは飲み合わせに注意が必要です。しかし、病気によっては、マクロライド系抗生物質での治療が第一選択の場合もあるので、移植外科の主治医と相談してください。(入院中であれば、プログラフ・グラセプターを一旦中止して、マクロライド系抗生物質を投与することもあります。)
プログラフ・グラセプターを服用中のお子さんは、街のかかりつけ医には、あらかじめ「マクロライド系抗生物質は飲み合わせが悪い」とお伝えしましょう。マクロライド系抗生物質でないと治療できない病気の場合は、移植外科の主治医に相談しましょう。
その他の服用しているお薬の飲み合わせについては、主治医または薬剤師にお聞きください。
グレープフルーツ以外の柑橘類は食べてもいいの?
グレープフルーツを食べちゃダメと言われました。他の柑橘類は食べてもいいの?
食べられるものと食べられないものがあります。
肝移植を受けると、免疫抑制剤を服用します。免疫抑制剤のうちプログラフ(タクロリムス)やネオーラル(シクロスポリン)は、肝臓で代謝されて、体外へと排泄されます。その際に、薬に作用する酵素(CYP3A4)によって薬は代謝されますが、グレープフルーツに含まれる「フラノクマリン」という成分が、この酵素の働きを抑えて(阻害作用)しまいます。酵素の働きが抑えられてしまうと、薬が代謝されずにまた体内を循環してしまうため、薬の血中濃度が上がってしまいます。プログラフなど免疫抑制剤は、一人ひとりの代謝能力などに合わせて血中濃度を計って服用しているため、血中濃度があがってしまうと、思わぬ副作用が出てしまうことがあります。
プログラフの場合、腎臓に負担がかかる副作用があります。そのため、血中濃度があがってしまうと、人によっては腎臓に副作用が出てしまうことがあります。グレープフルーツなどフラノクマリンを含むものは、摂取しないように注意が必要です。
グレープフルーツなどに含まれるフラノクマリンは、含有量が一定しているとは限りません。また、フラノクマリンによる阻害作用も個人差があります。そのため、万が一一口、二口など少量を誤って摂取しても慌てる必要はありませんが、できる事なら意識して、摂取することは避けましょう。
【参考】国立健康・栄養研究所:グレープフルーツと薬物の相互作用について
【参考】愛媛大学医学部附属病院薬剤部 薬品情報室:グレープフルーツおよび他の柑橘類との薬物相互作用
◇Facebookノート:【教職員への資料(肝臓移植編):おやつ・給食について】補足説明(柑橘類)
感染症について
感染症について
移植後は、免疫抑制している状態なので、感染症に掛かりやすくなります。
肝臓移植し、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を服用して、免疫が抑制されると、身体の抵抗力が低下するので、感染しやすくなります。水ぼうそう・おたふく・風しん・麻疹・インフルエンザなどでは、感染してしまうと「重症化」することもあります。
この中でも、「水ぼうそう」を発症したお子さんと同じクラスや濃厚な接触(同じ部屋で遊んでた、近距離で遊んでた)があった場合は、主治医と相談してください。予防のためにお薬を飲む場合があります。
また、インフルエンザなどが幼稚園内で猛威をふるっている場合は、お休みをすることを考えてもいいと思います。食事の前、感染症が流行っている時は、手洗いをして予防しましょう。
【注意すべき兆候と症状】
(1)発熱:38度以上の高熱、37.5度以上の熱が24時間続く
(2)せき:肺や上気道に病原体(細菌・ウイルス)が感染している可能性があります
(3)皮膚や傷口の以上:赤く腫れていたり、熱を持っていると傷口が病原菌に感染している可能性があります
(4)発疹:小児の罹りやすい発疹性疾患*の可能性があります。
*発疹性疾患:麻しん・風しん・水ぼうそう・突発性発疹・しょうこう熱など
以上のような症状がある人と濃厚接触*をした場合も、感染した可能性があり、主治医や移植コーディネーターに連絡しましょう。
*濃厚接触:感染症に罹っている人と同じ部屋に一時間以上いること
予防接種について
予防接種について
予防接種については、移植外科の主治医とよく相談しましょう。
多くの方は移植前に予防接種をするように言われます。移植後に免疫抑制剤を飲み始めると、抗体が付きにくいからです。病院によっては、移植後一定の期間が経ち、肝機能などが安定したら、予防接種を始めることもあります。
予防接種には不活化ワクチンと生ワクチンがありますが、飲んでいる免疫抑制剤の種類によっては、生ワクチンは打てないこともあります。
熱が出た場合
熱がでた場合
免疫抑制剤を休むことがあります。主治医に連絡しましょう。
肝臓は38℃以上の熱がでると、代謝能力が落ちます。代謝能力が落ちますと、薬が代謝されず、再度血液の中に流れます。血中濃度が下がらないため、このまま免疫抑制剤(プログラフ)を服用し続けると、タクロリムス(プログラフの成分名)の血中濃度がどんどん上がり、濃くなってしまいます。そのため、38℃以上の熱がでた時は、一旦プログラフの服用を止めることがあります。
また、感染症などで高熱が出た場合、身体の免疫システムを一旦回復させて感染症を治すためにプログラフの服用を止めたり、服用する薬(マクロライド系抗生物質など)の効能を優先させるためにプログラフを一旦中止したりすることもあります。
プログラフを止めるかどうかについては、移植外科の主治医と連絡をとり、子どもの症状を伝えた上で、判断を仰いでください。
脱水について
脱水について
脱水は肝臓に大きな負担を与えます。
免疫抑制剤は、薬の血中濃度をコントロールして飲むお薬です。普段は決まった時間に、一定の量を服用しているため、血中濃度が一定しております。多量の汗をかいたり、激しい嘔吐下痢を起こした場合、急激に体内の水分が失われ、脱水状態となります。脱水状態になると、薬の血中濃度が上昇し、濃くなります。そうなると思わぬ副作用(腎臓への負担など)がでることがありますので、夏場の運動時などは脱水にならないよう、こまめな水分補給を促しましょう。
脱水は夏場の汗かき、熱中症だけに起きる症状ではありません。胃腸炎などで、激しいは嘔吐や下痢を起こした場合も、急激に水分が失われます。冬場のノロウイルスやロタウイルスに感染し、激しい嘔吐や下痢の症状があらわれた場合、移植外科の主治医と相談して、点滴を受けた方が良いかどうか、判断をあおぎましょう。(近隣に、点滴補水をしてくださるかかりつけ医を見つけておくと心強いです。)
肝臓疾患の人は脱水症状に気をつけるようにと聞きました
肝臓疾患の人は脱水症状に気をつけるようにと聞きました
肝臓疾患の患者さんにとって脱水症は場合によっては命取りとなります。
夏は熱中症、感染症が流行る季節にはノロウィルスやロタウイルスによる嘔吐下痢症で脱水することがあります。普段から水分補給を心がけ、夏場や嘔吐下痢症の時は、意識して水分補給をしましょう。
脱水には水分補給が必要となりますが、汗や嘔吐下痢などにより、水分だけではなく、ミネラルなどが失われ、体内の電解質バランスが崩れる時があります。市販のOS-1は失われた水分とミネラル補給を目的とした「経口補水液」です。常備しておくと安心です。
なお、スポーツドリンクなどは「糖分」が強めです。「経口補水液」で飲める場合は経口補水液で、お子さんがどうしても飲めない場合はスポーツドリンクでも良いのですが、出来れば経口補水液を工夫して飲ませるとよいでしょう。インターネットで検索をかけると、いろいろな「経口補水液」を飲みやすいようにしたレシピが見つかります。
【参考】経口補水液OS-1
肝臓移植/お役立ち情報/家庭でできる経口補水液の作り方
学校生活などで注意すること
学校生活などで注意すること
肝臓移植後は概ね一般の方とあまり変わらない生活ができますが、一部注意することがあります。
開腹手術しているため、腹部への強打には気をつけてください。子どもによっては、移植した肝臓が肋骨内に収まっていないため、鉄棒など一点を圧迫するような運動は医師より禁止されている場合があります。(詳しくは主治医にお尋ねください)
動物園などで、鳥・げっ歯類・小動物などと触れた場合は、動物由来の細菌・ウィルスなどの感染予防のため、手洗いをするようしましょう。
歯の治療などについて
歯の治療などについて
虫歯治療で抜歯などをする時は事前に主治医と相談してください。
免疫抑制剤を服用中の場合、口の中の雑菌が抜歯した傷口などに感染を起こすことがあります。虫歯治療などで、抜歯をする可能性がある場合、事前に移植外科の主治医とご相談ください。場合によっては、抜歯前に抗生物質などを服用する可能性があります。乳歯から永久歯への生え変わりで、自然と歯が抜ける場合はあまり心配はいらないそうです。
歯の健康は大切ですので、定期的に歯科健診を受けましょう。
どんな時に受診するの?
どんな時に受診するの?
お子さんに下記のような症状があらわれましたら、主治医へ連絡しましょう。
(症状によっては、入院することもあります。)
(1)激しい嘔吐や下痢:水分が急激に失われるので、脱水になる可能性があります。
(2)発熱:38度以上の熱がでた時、プログラフを飲んでいるお子さんは服用休止することがあります。
(3)腹痛:開腹手術をしていると癒着があるため、稀に術後の合併症で「腸閉塞」が起こります。激しい痛みの場合は、主治医に連絡し、場合よっては救急車を呼びましょう。
肝移植を受けた女性は将来妊娠・出産できるの?
肝移植を受けた女性は将来妊娠・出産できるの?
肝移植を受けた女性が妊娠・出産した例はあります。主治医と相談しましょう。
肝移植の歴史はまだ50年ほどですが、すでに肝移植を受けた女性の妊娠・出産例はあります。肝臓に限らず、移植された場合、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を服用します。免疫抑制剤は色んな種類がありますが、中には胎児に影響すると思われる薬もあります。そのため、妊娠を希望される女性は、まず移植の主治医に妊娠希望を伝え、薬の調整や体調管理などを産科と連携を取ることが望ましいです。
【参考】国立成育医療研究センター病院:肝移植手術を受けられた方の将来に妊娠・出産につきまして
子どもが移植受けました。ペットは飼っていいの?
子どもが移植受けました。ペットは飼っていいの?
ペットは術後ある程度の時間が経ってから飼ってもいい場合があります。主治医と相談しましょう。
肝移植を受けると、免疫抑制剤を服用します。そのため、感染症に気をつける必要があります。術後、ある程度の時間が経って、体調が落ち着けば、ペットを飼ったりすることも出来ます。しかし、動物の場合、人間とは違う細菌やウィルスが持っており、それが人間にも感染する場合があります。そのため、動物によっては、飼うことを控えたほうがよい場合もあります。国立成育医療研究センターでは、移植をしたお子さんとペットについて、小冊子を作成しております。ご参考にしてください。
ペットを飼っていたり、これから飼いたいと思う方は、主治医にご相談ください。
子どもが入院をしております。しかし、きょうだいも気になります。
子どもが入院をしております。しかし、きょうだいも気になります。
きょうだい児のケアも気になりますね。きょうだい児のサポートしている団体に相談してみてはどうでしょうか。
子どもが入院していると、親としてはそばにいてあげたいですよね。何か具体的に親として子どもにできる事がない場合も多いので、尚更そばにいてあげたいと思うこともあることでしょう。しかし、ご家庭によっては、親の宝物は、闘病している我が子だけではありません。闘病しているお子さんのお兄ちゃん、お姉ちゃん、弟さん、妹さんも同じように大切です。 入院している子につきっきりだから、お兄ちゃん、お姉ちゃんは必要以上にしっかりし過ぎているんじゃないか?我慢させているんじゃないか?下の弟や妹は、ママがいないから甘えるのを我慢しているんじゃないか?寂しい思いをさせているんじゃないか?親としては、身を切られるような思いをしていると思います。 きょうだい児が、病気の兄や姉、あるいは弟や妹についてどう思っているのか?病気のこと、どう伝えたらいいのか?親がそばにいてあげられないけど、同じように気にかけているんだけど、どうしてあげたらいいのか?親として、とっても悩んでいることでしょう。 そんなきょうだい児の悩みを抱えている親御さんや、きょうだい児をサポートしている団体があります。大きな団体ではないので、活動もまだ広まってはいませんが、同じような悩みを抱えている親御さんの相談相手や、きょうだい児自身が語り合える場なども設けているようです。 患児同士が将来自分の病気について、語り合う場も少ないのですが、患児のきょうだい児が語り合える場はもっと少ないです。でも、そういうきょうだい児を支援している団体があることも知ってください。そして、必要ならば、連絡をとってみてはいかがでしょうか?子どもは親だけで育てるものではなく、大人たちが共に育てることも時には必要です。一人で悩まずに、相談してみましょう。
(クリックするとホームページが開きます)
病気の子どもの「きょうだい」が安心して自分の気持ちを話せる居場所を増やすため、細々ときょうだい支援の種を蒔いているボランティアグループです。「きょうだいさんのための本」という小冊子をホームページで無料配布しております。
宿泊保育や修学旅行が気になります。NEW
宿泊保育や修学旅行が気になります。
教師や養護教諭と事前によく話し合いをしましょう。
宿泊保育や修学旅行、ある意味集団生活を体験するとても大事なイベントですね。お友達と親のいない旅行先でいろいろ体験することは、成長にとてもよい刺激を与えますし、良い思い出にもなりますので、ぜひ参加させたいですね。
参加させるためには、日頃の体調管理も大切ですが、引率の先生や養護教諭などと、気になるところや、配慮してもらいたいこと、万が一の対応方法などを事前によく話しあいましょう。その際に気をつけるのが、(1)お薬の管理(2)急病や怪我などの緊急時対応(3)保護者、主治医の連絡先などです。
(1)お薬の管理
小分けのジップロックなどに、ハッキリと分かりやすく服用するお薬の種類・色・量を記入しましょう。定期的に服用するお薬は一回で一つの小分け袋が分かりやすいかと思います。万が一の頓服薬などは、定期的に服用するお薬とは「違いがわかるよう」に別の色の袋に入れるなど、「分かりやすさ」を心がけましょう。お薬袋に明記するほか、お薬の服用について丁寧に説明を書いた備忘録を準備もしておくと良いでしょう。
園や学校側でも、事前に記入する書類や資料はあるかと思いますが、保護者側で丁寧な資料を準備する分には問題ないと思いますし、相手も助かると思います。お薬の管理をしていただくのは担任なのか、養護教諭なのかも確認しておきましょう。
(2)急病や怪我などの緊急時対応
宿泊保育や修学旅行の2ヶ月ぐらい前の外来から、主治医に相談しましょう。急病や怪我などの緊急時に対応してもらう病院を紹介してもらったり、緊急時の搬送先の医師に見せる手紙などを書いてもらうなど、事前に準備をすると安心です。
また、宿泊保育や修学旅行にかぎらず、遠足などで遠出する時にも、緊急時医療情報を子どもに携帯させることも一つの方法です。「アスモスマイル」というサイトでは、救急医が監修して作った救急医療情報カード「まもるカード」というアイテムを企画・販売しております。このようなアイテムを使い、必要な医療情報を記入して、お子さんに持たせておくと、万が一の時に迅速に・的確な治療を施してもらえるかと思います。
【参考】アスモスマイル:緊急医療情報カード「まもるカード」
(3)保護者、主治医の連絡先
保護者の緊急連絡先は元より、主治医の連絡方法なども担任の先生にお伝えしましょう。場合によっては、緊急連絡先を書いた小さなカードなどを渡すと良いかもしれません。また、緊急時の搬送先が予め決まっていることもありますので、教えてもらったり、旅行先の付近の医療機関なども下調べしておくといいでしょう。