再生医療とは、怪我や病気で傷ついた自身の組織や臓器を、自身由来の幹細胞などを用いて修復や再生をする医療のことをいいます。
臓器移植は、末期の症状を患った患者にとっては、最後の頼みの綱です。しかし、脳死移植の場合、日本人の死生観などもあり、脳死ドナーが不足しております。生体移植の場合は、健康な人にメスを入れるため、安全が絶対的な前提の上、ドナー選定のために家族内などで葛藤があるなど、臓器移植には様々な課題があります。また、臓器移植をした場合、身体にとって他人の臓器は「異物」であるので、どうしても「拒絶反応」が起きます。「拒絶反応」を防ぐために、免疫抑制剤などを服用して「免疫抑制」をしますが、それによって免疫力が低下し、感染しやすくなったり、感染症が重症化しやすくなるリスクをおいます。こうした課題から、今後は「再生医療」が期待されております。
再生医療とは、患者自身の組織から採取した幹細胞を元に、自身の傷ついた組織や臓器を修復したり、再生する医療のことをいいます。これにより、ドナーを必要とせず、自身の幹細胞なので拒絶反応もないという、臓器移植の課題を解決する医療として、現在、世界各国で研究開発されております。まだまだ研究段階ですが、少しずつ人の治療、臨床に応用は始まっております。
患者の治療は主治医とよくご相談ください。
人工肝臓の研究
胆道閉鎖症や乳幼児肝疾患の保護者や患者さんにとって、最も関心度の高い再生医療は「人工肝臓」の研究かと思います。ここでは、人工肝臓の研究について、ニュースや情報を蓄積していきたいと思います。
臓器移植や再生医療の研究は、様々です。2014年9月に、日本の理化学研究所が、世界で初めてiPS細胞から作製された目の網膜細胞の移植手術を行いました。手術は成功し、2015年2月現在、患者の方は拒絶反応もなく順調に回復しているそうです。これに続き、第2例目のiPS細胞の移植手術が準備中とのことです。
肝臓分野に関しては、ドナーから肝細胞を取り出して移植する「肝細胞移植」が、2013年に日本で初めて小児に対して行われました。この症例では、生後11日の重い代謝性疾患の赤ちゃんに対し、生体肝移植ドナーから提供された肝臓より取り出した肝細胞を、へその緒から注入する手術でした。この手術から半年後、赤ちゃんが成長して体力などがついてきたところで、生体肝移植を施したそうです。「肝細胞移植」は、このように現在は「生体肝移植までの橋渡し」の役割が強いですが、いずれはiPS細胞から肝細胞を作成し、肝細胞移植することが一つの治療方法になるのかも知れません。
肝臓の臓器そのものを作製する研究は、現在いくつかの研究機関で進められております。横浜市立大学の谷口英樹教授の研究グループでは、iPS細胞を用いて、ヒトの肝臓の機能を持った「立体的な構造」を持つミニ人工肝臓の作製に成功しています。このミニ人工肝臓をマウスに移植して、ヒトの肝臓の機能が働くことが確認されたそうです。今後の課題は、こうした「ミニ人工肝臓」を安全で、大量作製することで、現在そうした大量作製装置はすでに開発されております。谷口英樹教授によると、早ければ平成31年度にこのミニ人工肝臓で、重い肝臓病を持つ子どもから臨床を始めたいとのことです。
【参考】横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学サイト
人工肝臓研究関連のニュース
iPS細胞で肝臓再生へ 理研認定ベンチャー(2015.7.7)NEW
iPS細胞で肝臓再生へ 理研認定ベンチャー
iPS細胞で肝臓再生へ 理研認定ベンチャー
2024/7/7 神戸新聞NEXT
理化学研究所(理研)認定の医療ベンチャー企業で、神戸・ポートアイランドに研究拠点を持つヘリオス(東京)は6日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、横浜市立大と協力しながら立体的な肝臓組織を再生し、臨床応用を目指す方針を明らかにした。同社は理研などと協力し、iPS細胞を使った目の難病の治療法開発を進めており、肝臓再生はその次の目標という。
神戸市内で開いた報道関係者向けの会合で鍵本忠尚社長が言及した。
理研などは昨年9月、目の難病患者に対し、臨床研究としてiPS細胞を使った網膜細胞を世界で初めて移植。ヘリオスは理研などと協力し、2017年からの臨床試験(治験)、20年の製造販売承認を目指す。
横浜市立大は、iPS細胞など3種類の細胞を使って血管網を伴う肝臓組織を再生することに成功し、19年度にも臨床研究を開始予定。ヘリオスは同大からこの再生技術の利用権を得ており、鍵本社長は「目の病気以外でも、iPS細胞を使った治療法を広げたい」と話した。(金井恒幸)
iPS細胞から臓器 4年後に世界初の臨床研究 立体的に作製、移植し再生(2015.5.4)
iPS細胞から臓器 4年後に世界初の臨床研究 立体的に作製、移植し再生
iPS細胞から臓器 4年後に世界初の臨床研究 立体的に作製、移植し再生
2015/5/4 産経ニュース
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って立体的な臓器を作る研究が加速している。万能細胞による再生医療は網膜など細胞レベルでの研究が中心だったが、最近は肝臓や腎臓などを立体的に作製する手法が登場。横浜市立大は立体臓器を世界で初めて移植する臨床研究を2019年度に開始する計画だ。(伊藤壽一郎)
クリックすると拡大します「臓器の芽」
横浜市立大の武部貴則准教授らは今年4月、さまざまな種類の臓器を立体的に作製する汎用(はんよう)的な手法を確立したと発表した。iPS細胞など3種類の細胞を使って臓器の基になる小さな塊を作り、これを培養して立体的なミニ臓器を作り出すというものだ。
iPS細胞から目的の臓器を直接つくるのではなく、臓器や器官の細胞に分化する一歩手前の前駆細胞を作製。これを細胞同士をつなぐ間葉系細胞、血管のもとになる内皮細胞と混合して培養し、器官原基と呼ばれる小さな「臓器の芽」に成長させる。
研究チームはこの手法で約2年前、ヒトiPS細胞から直径約5ミリのミニ肝臓を作ることに世界で初めて成功した。マウスの肝臓に移植すると2~3日で血管がつながり、血流も生まれて一体化。肝機能不全のマウスに移植したところ、約2週間できちんと機能して胆汁も生成し、生存率が大幅に向上した。
さらに今回、この手法が他の臓器にも適用できるか調べるため、マウスを使って実験。その結果、腎臓や膵臓(すいぞう)、腸、心臓、肺、脳の立体的な原基を作ることができた。移植すると血流も生まれ、特に腎臓は尿を作る能力も発揮することが分かった。
新生児の肝臓治療
3種類の細胞は、どのように「臓器の芽」に成長するのか。その詳しい仕組みは分かっていなかった。そこでチームは細胞の組み合わせや培養条件を変えて、肝臓の原基が形成される環境を分析した。
その結果、間葉系細胞が大きな役割を果たしていることが判明。また、細胞が自然に寄り集まる「自己組織化」という現象によって立体化するためには、培養する際の土台となる物質に適切な硬さが必要なことを突き止めた。
武部准教授は「iPS細胞から多様な立体臓器を作製する道が開けた。再生医療のほか、病態の解明や創薬にも役立つだろう」としている。
この成果を踏まえ横浜市立大は、肝臓の原基を患者に移植する臨床研究を19年度に実施する計画を進めている。対象は出生前診断で肝臓疾患が見つかった新生児だ。
原基を作る細胞のうち、肝臓の前駆細胞は、京都大iPS細胞研究所が備蓄している他人由来のiPS細胞を利用して作る。間葉系細胞と内皮細胞は、出産時に臍帯(さいたい)から採取する。肝臓原基は出生直後から数カ月後までに移植する計画だ。
安全性の確認が課題だが、成功すれば他の臓器にも応用の可能性が広がる。計画を指揮する谷口英樹教授は「早く臨床研究を行い、iPS細胞による新しい治療概念を実証したい」と意気込む。
前倒しで実現
政府は13年、iPS細胞による再生医療について、10年間で計1100億円の研究費を支援する方針を決定。30年には国内の市場規模を1兆円に成長させることを目指している。
このため文部科学省や経済産業省、厚生労働省が個別に行っていた研究を統合し効率化。一元的な窓口となる日本医療研究開発機構を今年4月に開設し、体制を強化した。これらを追い風に、立体臓器の研究は急ピッチで進展しそうだ。
文科省が13年にまとめたiPS細胞研究の工程表では、立体臓器の作製技術は16年末までに網膜や下垂体、肝臓など、21年末までに肺や腎臓、脳などで確立を目指すとした。
だが肝臓などは横浜市立大が既に確立し、腎臓も熊本大が別の手法で作製に成功した。立体的な構造物を簡単に作れる細胞専用の3Dプリンターを使った臓器作製の取り組みも、東京大や大阪大で進んでいる。
日本医療研究開発機構の再生医療研究課は「研究の進展は速く、工程表よりも大幅に早まるのは確実だろう」とみている。
【ニッポン病院の実力】iPS細胞から肝臓の芽 移植応用に期待「横浜市立大学先端医科学研究センター」(2015.3.4)
【ニッポン病院の実力】iPS細胞から肝臓の芽 移植応用に期待「横浜市立大学先端医科学研究センター」
【ニッポン病院の実力】iPS細胞から肝臓の芽 移植応用に期待「横浜市立大学先端医科学研究センター」
2024/3/4 ZakZak
京大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、国の施策として再生医療実現拠点ネットワーク事業が進められるなど、臨床応用に向けたさまざまな取り組みが行われている。しかし、iPS細胞で網膜や心筋膜のような組織の一部は再生できても、立体的な臓器を作り出すことは難しいとされてきた。
たとえば、肝臓は肝細胞だけでなく、別の細胞や血管などが入り組んでいるため、ひとつの細胞から分化して、立体的な臓器にするには複雑すぎる。ならば、胎児が肝臓をつくり出すように、肝臓の枠のような組織をつくり、そこから肝臓の細胞を生み出して立体化させてはどうか。この発想の転換により、2013年に世界で初めて横浜市立大学先端医科学研究センターが、iPS細胞による血管構造を持つ機能的なヒトの肝臓をつくり出すことに成功した。
同センターは、2008年、横浜市の中期計画により横浜市立大学附属病院に隣接して開設されて以来、イノベーションシステム整備事業など国家プロジェクトの一翼を担い、再生医療もそのひとつとなっている。
「私たちが開発した臓器の芽は、身体の内に移植することで、血管が生じて血液が流れるなど、肝臓としての機能を発揮する仕組みを持っています。マウスの実験では、それを確かめることができました。しかし、人間への臨床応用には、解決すべき課題はまだ多い」
こう話すのは、同センターの再生医学を牽引(けんいん)する横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学の谷口英樹教授(51)。恩師の岩崎洋治筑波大学元教授(故人)の下、研修医時代から臓器移植と再生医療への道の研究を重ね、2002年に現職となってからも、その情熱は消えることがなかった。そして、同科の武部貴則准教授らと研究を進め、長い道のりを経て、世界初のiPS細胞によるヒトの肝臓創出を成功させたのである。
「マウスへ移植した肝臓の芽と比べて、患者さんへ臨床応用するには、大量の肝臓の芽が必要になります。品質管理や製造、移植操作技術、有効性など、準備するにはまだ時間がかかるのです。その第一歩として、昨年12月に細胞加工施設を設置しました」
谷口教授によれば、この施設では、iPS細胞による肝臓の芽を大量に作ることが可能になる。複数の細胞を同時に作り、連結させるシステムとしては、世界唯一の設備という。肝不全で移植を待つ人にとっては、臨床応用への期待は膨らむが、実用化への道のりはまだ遠い。
「私たちのゴールは、患者さんを治すことにあります。生体肝移植の代わりとなる治療法を開発して、患者さんを治したい。そのゴールにたどり着くには、ひとりの力では難しい。私が恩師の岩崎先生からバトンを渡されたように、私も次世代へバトンをつなぎ、患者さんを助ける方法を確実なものにしたいのです。歴史的な視野に立ち、今後も開発に取り組みたいと思っています」と谷口教授。未来の医療の扉を開け、前進すべく奮闘中だ。 (安達純子)
【データ】※センターの国家プロジェクトへの参画状況
・イノベーションシステム整備事業(文科省)
・再生医療実現拠点ネットワークプログラム(科学技術振興機構)
・脳科学研究戦略推進プログラム(文科省)
・厚生労働科学研究委託事業(厚労省)
・次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム(文科省)
・戦略的研究シーズ育成事業(神奈川科学技術アカデミー)
〔住所〕〒236-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3の9 (電)045・787・2527
“ミニ肝臓”大量作製装置を開発(2015.2.16)
“ミニ肝臓”大量作製装置を開発
“ミニ肝臓”大量作製装置を開発
2015/2/16 NHK NEWSWEB
iPS細胞から大きさが数ミリの“ミニ肝臓”を大量に作り出す装置を、横浜市立大学などの研究グループが開発しました。
重い肝臓病の子どもにこの“ミニ肝臓”を移植する臨床研究を平成31年度にも始めたいとしています。
“ミニ肝臓”を大量に作り出す装置を開発したのは、横浜市立大学の谷口英樹教授らの研究グループです。
アイソレーターと呼ばれる滅菌された作業台にベルトコンベアが設置され、iPS細胞から作った肝臓の細胞が入ったシャーレや培養液などが次々と手元に送られてきて、研究者が効率的に作業をできるようになっています。
1か月ほどで最大数ミリの“ミニ肝臓”を作り出すことができるということで、研究者の手作業を一部自動化し作製効率を100倍以上に高めることができたとしています。
研究グループは平成31年度にも、重い肝臓病の子どもにこのミニ肝臓を複数個移植して治療する臨床研究を始めたいとしています。
谷口教授は「自動車の工場のように、ロボットの手助けで大量にミニ肝臓を作り出すことができる。平成31年度からの臨床研究に向け大きな一歩になる」と話しています。
移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力(2015.2.3)
移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力 "ミニ肝臓"で肝不全患者を治療へ
移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力
2024/2/3 東洋経済オンライン
「谷口君、肝臓を作れませんか?」
1989年12月、研修医1年目だった横浜市立大学の谷口英樹教授は、恩師で筑波大学の教授だった故・岩崎洋治氏からこう尋ねられた。岩崎氏は1984年に日本初の脳死患者からの膵・腎同時移植を行い、殺人罪で告訴されるなど波乱の中で移植医療を開拓した臓器移植の第一人者。谷口教授は岩崎氏を間近で見ながら、自ら外科医として肝臓移植などを執刀してきた。「ドナー臓器の不足を抜本的に解決しなくては移植医療の未来はない」――冒頭の問いかけに込められた岩崎氏の強い危機意識を、谷口教授も共有していた。
iPS細胞からミニ肝臓を大量製造
その日から25年余り経った今、肝臓をはじめとする臓器の作成は実現可能な夢になりつつある。横浜市立大学の先端医科学研究センター内では、世界唯一の「ヒト臓器製造システム」の構築が進む。全自動ではなく、人の作業をロボットが支援する「トヨタ方式」を採用してiPS細胞(人工多能性幹細胞)から直径5ミリメートルほどの“ミニ肝臓”を大量に作り、将来的に肝不全の治療に役立てる予定だ。
谷口教授の研究グループは臓器作りで世界をリードしてきた。2013年にはiPS細胞からの血管構造を持つ人の肝臓の作成に成功。世界初の小さな立体臓器が科学界に与えた衝撃は計り知れない。
それまで、世界の研究者はiPS細胞から「肝細胞」を作ることに固執していた。細胞の分化の分子生物学的なメカニズムを基に、iPS細胞にいろいろなタンパク質を段階的に振りかけて肝細胞を作る。それを患者に注射して病気を治そうという考え方だ。
だがこの方法には、最終的に作られた細胞の品質がとても低く、大量生産が難しいという難点があった。治療法としても、臓器の機能を失った患者に対し、臓器移植よりも良い結果が得られるのかは不明だった。「外科医としての経験から、細胞を注射することで本当に患者を治せるのか疑問を抱いていた。一方、臓器移植は起死回生の手段であり、瀕死の患者が翌日には回復する高い治療効果を目の当たりにしてきた」(谷口教授)
そこで谷口教授らは発想を転換。「肝細胞」ではなく「肝臓」を作り出すことを目標に据え、胎児内で肝臓が作られるときに起こる細胞同士の相互作用の再現を試みた。
iPS細胞から肝細胞になる手前の前駆細胞を作り、そこへ血管のもととなる内皮細胞、接着剤の役割を担う間葉系細胞の2種類の細胞を混ぜて培養。すると、すべての細胞が48~72時間でボール状に集まってきた。これが網目状の血管構造を持つミニ肝臓だ。
ミニ肝臓をマウスに移植すると、血液が流れ込み、マウス体内に人に特有なタンパク質が分泌され、人の肝臓でしか代謝されない薬物の代謝産物が産生。ミニ肝臓が人の肝臓の機能を持っていることが示された。また、肝不全のマウスに移植すると、30日後の生存率が何もしなかったマウスの約3割に比べて約9割に向上。ミニ肝臓はマウスにおいて顕著な治療効果を発揮した。
膵臓や腎臓の製造も研究中
人での臨床研究は、子どもの肝臓病を対象として2019年をメドに開始する。ミニ肝臓が大量に必要になるため、クラレと量産技術を共同開発中。ほかの企業とも連携して「ヒト臓器製造システム」の整備を進め、臨床研究の準備を行っている。
ミニ肝臓の次のフロンティアの一つは、肝臓以外のミニ臓器への展開だ。現実的なターゲットとして、血糖値を下げるホルモン、インスリンを分泌する膵臓や、腎臓の研究が進められている。
もう一つは、ミニでない丸ごとの臓器を作ること。線維化して細胞が生着するスペースのない肝硬変のような病気や、全体の構造があって初めて機能を持つ心臓、子宮、肺等の病気などは、ミニ臓器では治療できず、丸ごとの臓器の移植が必要となることが多い。この分野は米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などに莫大な研究資金が投下されており、世界的にも注目が集まる。
急ピッチで進む臓器研究だが、再生医療の中で、今まさに人への応用が進んでいるのは細胞が主役の方法だ。昨秋には理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによって目の難病である加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞の世界初の移植手術が行われた。今後もパーキンソン病や心不全の患者にiPS細胞から分化させた細胞を移植する臨床研究が計画されている。立体臓器が活躍するのはそのさらに先の段階だ。
谷口教授は「複雑な臓器形成は再生医療の中では最も困難なテーマの一つ。だが、重い臓器不全の患者には臓器移植以外に既存の治療法がなく、非常に強い医療ニーズがある」と強調する。肝臓移植の場合、ドナー臓器の待機中に死亡する患者は世界で年間2万5000人超。「究極の医療」として、臓器作りにかかる期待は大きい。
横浜市立大、細胞の「芽」使い肝不全を治療(2015.1.26)
横浜市立大、細胞の「芽」使い肝不全を治療
2024/1/26 23:49日本経済新聞 電子版
横浜市立大、細胞の「芽」使い肝不全を治療
■横浜市立大学 谷口英樹教授らは肝臓を再生する新しい治療法を開発した。肝不全モデルのラットに肝臓の芽となる細胞を移植すると、半分以上正常な細胞に置き換わることを確かめた。2019年をメドにヒトでの臨床研究を目指す。
研究チームは肝臓の細胞になる前の「肝芽」と呼ぶ細胞に着目した。胎児が持つ未分化の状態の細胞で、次第に肝臓に成長する。薬を投与して肝機能を働かなくした肝不全ラットに肝芽を移植した。
約150日後に肝臓を取り出し顕微鏡で観察すると、約6割が正常な肝細胞になっていた。移植した肝芽が正常な肝細胞に成長し、働かなくなった肝細胞と置き換わった。さらに日数がたてば、正常な細胞の比率がより増える可能性もある。
研究チームはiPS細胞から肝芽を一度にたくさん作る成果もあげている。今後、ラットにiPS細胞から作った肝芽を導入し、同様の効果が見られるか確かめる。ヒトでの臨床研究も目指す。
ニッポンのすご技!3Dプリンター×ヒトのコラーゲン、幹細胞で移植用組織 感染症回避 東大病院と富士フイルムなど技術開発/5年後の実用化目指す(2015.1.3)
ニッポンのすご技!3Dプリンター×ヒトのコラーゲン、幹細胞で移植用組織 感染症回避 東大病院と富士フイルムなど技術開発/5年後の実用化目指す
肝臓などの臓器にいずれ応用していくそうです。
ニッポンのすご技!3Dプリンター×ヒトのコラーゲン、幹細胞で移植用組織 感染症回避(産経WEST)
東京大学医学部付属病院と富士フイルムなどが、立体の造形物を簡単に作製できる3Dプリンターと遺伝子工学を駆使し、人体に移植できる皮膚や骨、関節などを短時間で量産する技術を確立したことが2日、分かった。移植の難題となっている感染症の危険性を低く抑えられるのが特長。世界初の技術といい、5年後の実用化を目指している。
開発したのは、東大病院顎(がく)口(こう)腔(くう)外科の高戸毅教授らの研究チーム。肝臓など臓器にも応用する考えで、体外で生成した健康な組織を患部に移植する「再生医療」を大きく前進させる可能性がある。
高戸教授によると、病気やけがで皮膚、骨、軟骨、関節の移植が必要な患者は国内で計2千万人以上。現在は患者本人の患部以外から切除した組織を使うなどしており、体への負担が大きい。
患者の負担を減らす方法として、国内ではウシなど動物の組織とプラスチック素材を主な原料に3Dプリンターで移植用組織を作る技術がある。ただ感染症のリスクがあり、組織が人体になじむ「同化」に2~3年はかかる。頭蓋骨や大(だい)腿(たい)骨(こつ)といった強度の必要な組織の作製も難しいという。
研究チームは今回、皮膚や軟骨、骨などの基本構造の7割以上が、タンパク質の一種であるコラーゲンでできていることに着目。富士フイルムが遺伝子工学を駆使して開発したヒトのコラーゲン「リコンビナントペプチド(RCP)」を活用することで、感染症リスクの低減に成功した。
RCPに患者本人から取り出した幹細胞や細胞の増殖を活性化させるタンパク質「成長因子」などを混ぜて医療用に改良した3Dプリンターに装(そう)填(てん)。CT(コンピューター断層撮影装置)で得た体内組織のデータを活用して2~3時間で目的の組織を作製する。患者ごとに違った形、大きさにすることも可能という。
高戸教授は「感染症リスクの低下だけでなく、数カ月間での自然同化も可能」と説明する。動物実験では良好な結果が出始めているという。厚生労働省から必要な許認可を得た上で、5年後の実用化を目指す。
再生医療に詳しい埼玉医科大学形成外科・美容外科の中塚貴志教授は、今回の技術開発について「3Dプリンターが、再生医療に欠かせない医療機器に進化するための重要なステップになる」と話している。
再生医療への期待が過大すぎる。まだ「立体構造」が作れない…(2014.7.6)
再生医療への期待が過大すぎる。まだ「立体構造」が作れない…
再生医療へ私たちは大いに期待していますが、まだまだ道のりは長いようです。記事の中では、人工肝臓のことについても触れられてます。
再生医療への期待が過大すぎる。まだ「立体構造」が作れない…(All About)
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から色々な臓器の細胞ができたと報じられ、実用化も近いような雰囲気を醸し出していますが、現実問題として広く臨床応用されるようになるのは、まだまだ遠い未来の話と思われます。「立体構造を持ち、機能する臓器」の作製が、大きな壁として立ちはだかっているからです。(九州メディカルライター 南家弘毅)
横浜市大、iPS細胞からヒト肝臓原基を誘導する方法などのプロトコルを発表(2014.1.28)
横浜市大、iPS細胞からヒト肝臓原基を誘導する方法などのプロトコルを発表
着実に研究が進んでいるようです。
横浜市大、iPS細胞からヒト肝臓原基を誘導する方法などのプロトコルを発表(マイナビニュース_
横浜市立大学(横浜市大)は1月27日、iPS細胞からヒト肝臓原基を試験管内で誘導する方法、およびそれらを移植することにより機能的な臓器を得る方法に至るまでのプロトコルを詳細に記述し、さらに新たな移植部位やその詳細な手技を検討することにより、最適な移植手法を見出すことに成功したと発表した。
成果は、横浜市大 大学院医学研究科 臓器再生医学の武部貴則准教授、同・谷口英樹教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月24日付けで「Nature Protocols」にオンライン掲載された。
最適な培養方法・移植手法を見出すことに成功~『Nature Protocols』に掲載~(横浜市立大学)
横浜市立大学 大学院医学研究科 臓器再生医学 武部貴則准教授、谷口英樹教授らの研究グループは、これまでに試験管内においてヒトiPS細胞から立体的な肝臓の原基(肝臓のたね、肝芽)が自律的に誘導できること、さらにこのヒト肝臓の原基を生体内へ移植するとヒト血管網を持つ機能的な肝臓へと成長し、最終的に治療効果が発揮されることを明らかにしています。
本論文では、研究グループらが世界で初めて確立した、iPS細胞からヒト肝臓原基を試験管内で誘導する方法、および、それらを移植することにより機能的な臓器を得る方法に至るまでのプロトコールを詳細に記述しました。さらに、新たな移植部位やその詳細な手技を検討することにより、最適な移植手法を見出すことに成功しました。今後、本研究グループにおける再生医療研究が加速するのみならず、国内外の多くの研究者が本技術を利用することにより、iPS細胞を用いた臓器再生研究がますます広がることが強く期待されます。
乳歯幹細胞で肝臓治療(九大グループ)(2014.1.8)
乳歯幹細胞で肝臓治療(九大グループ)
九州大の歯学部と医学部の研究グループが、抜けた乳歯から様々な細胞に分化する幹細胞を取り出し、先天性の肝臓疾患の治療などに応用する研究を本格化させる。
【研究】乳歯幹細胞で肝臓治療(九州大学)
山座孝義講師(歯学研究院・分子口腔解剖学)と田口智章教授(医学研究院・小児外科学)らの研究グループは、抜けた乳歯から様々な細胞に分化する幹細胞 を取り出し、先天性の肝臓疾患の治療などに応用する研究を本格化させる。2014 年度にミニブタを使い、乳歯幹細胞から作製した肝臓細胞を移植する試験を始める。研究グループは「捨てられる乳歯なので倫理面の問題がなく安全性も高い。将来的に人への治療につなげたい」としている。
加速するiPS研究 ~山中教授に聞く実用化への道~(2013.12.5)
加速するiPS研究 ~山中教授に聞く実用化への道~
NHKのクローズアップ現代で、「加速するiPS研究 ~山中教授に聞く実用化への道~」が放送されました。横浜市立大学の谷口英樹教授らがすでに、iPS細胞から5ミリの人工肝臓を作成することに成功しております。
加速するiPS研究 ~山中教授に聞く実用化への道~
京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞してから1年。様々な分野でiPS細胞の実用化にむけた研究が加速している。目の難病「加齢黄斑変性」では、来年、iPS細胞から作られた網膜の組織が患者に移植される見通しだ。「目」に続いて人への応用を目指しているのが止血に必要な「血小板」。3年後に臨床試験を始める予定だ。献血の減少で将来の不足が心配される中、大きな期待を集める。さらに、iPS細胞から立体的なミニ肝臓を作りだすことにも成功。臓器移植にかわる新たな治療につながると注目される。一方で一般の人たちにiPS治療を届けるには課題もある。「コストダウン」と「安全性の確保」だ。国内のメーカーと連携し、「自動培養装置」などの開発が急ピッチで進む。国谷キャスターが京都大学のiPS細胞研究所を訪ね、実用化はどこまで近づいたのか、そしてこれからの課題を山中教授に聞く。
iPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を創り出すことに成功!(2013.7.1)
iPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を創り出すことに成功!
横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学の研究グループが、iPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を創り出すことに成功!―肝臓疾患の再生医療や、医薬品の開発研究を飛躍的に加速―
iPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を創り出すことに成功!(横浜市立大学)
横浜市立大学 大学院医学研究科 臓器再生医学 谷口 英樹教授、武部 貴則助手らの研究グループは、世界で初めてヒトiPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を創り出すことに成功しました。研究グループは、最終的に臓器を形成させるための第一段階として、まず臓器の原基(臓器の種)が胎内で形成される過程を模倣する新規の細胞培養操作技術を開発しました。この特殊な培養方法により、試験管内においてヒトiPS細胞から立体的な肝臓の原基(肝臓の種、肝芽)が自律的に誘導できること、さらにこのヒト肝臓の原基を生体内へ移植するとヒト血管網を持つ機能的な肝臓へと成長し、最終的に治療効果が発揮されることを明らかにしました。
本技術は、臓器移植の代替治療として多くの患者を救済する画期的な再生医療技術となるのみならず、創出された臓器を対象とした新たな医薬品開発の研究を飛躍的に加速することが期待されます。