◆どんな病気なの?
日本では、一万人に一人の割合で生まれてくる病気です。
肝臓内、もしくは肝臓の外にある胆汁の通り道(胆管)が、
なんらかの原因によって部分的、または全体的に閉鎖してしまい、胆汁が腸内へ流れない病気です。
胆汁は脂肪の消化・吸収を助ける働きがあり、これが流れないと、
脂肪、脂溶性ビタミンの吸収障害がおき、血液の凝固能力が働かなくなります。
これにより、内出血、特に小さい赤ちゃんは脳出血などの合併症などを起こします。
また、胆汁が肝臓にうっ滞することにより、肝機能障害があります。
【参考】小児外科学会HP:胆道閉鎖症
◆どんな症状が出るの?
胆道閉鎖症は大きく、三つの症状が出ることがあります。
すべてが同時に出るお子さんもおられれば、一つや二つしか出ないお子さんもおられます。
また病気の進行状況は人それぞれなので、症状が出る時期もまちまちです。
(1)薄い色のうんち
胆道閉鎖症は胆汁が腸に流れない、
もしくは流れにくくなる病気です。
胆汁はうんちの色の元でもあり、
腸に流れないとうんちの色が薄くなります。
医療サイトや育児書には「灰白色便」、
または「白っぽいうんち」
と表されることが多いのですが、
実際に患児の親が目にしたうんちの色は、
薄い黄色・薄い緑色・レモン色・メロンパンの色・
クリーム色・薄いうぐいす色など、
「薄い色」と言い表されることが多く、必ずしも「白い」色ではありません。
また、今までは医療従事者が問診の際に聞く「うんちは白っぽいですか?」の「白」も、
親が考えている「白」も、「色としての共通基準」がありませんでした。
2012年4月からは、母子手帳に便色カードが収載されたので、
医療従事者と保護者の間で、共通基準の色が示され、
より早く病気の発見に繋がることに期待しております。
(2)黄疸がでる
胆汁が流れないため、ビリルビンが体外へ排出されず、血液の中に溶け込み、体内を循環します。
そのため、皮膚に黄疸が出たり、白目の部分が黄色く(黄染)なります。
しかし、新生児には新生児黄疸と母乳性黄疸があり、
胆道閉鎖症によって引き起こされる「病的黄疸」と区別が付きにくいため、
黄疸が出ていても、見落とされることがよくあります。
母乳性黄疸と言われても、大抵母乳をとめたり、成長とともに引いていきますが、
一旦引いた黄疸が再度出てきたり、どんどん強くなって黒ずんできたりしたら、
かかりつけ医にご相談ください。
(3)濃い色のおしっこがでる
胆汁が流れず、うんちより体外へ排出されないため、尿から体外へ排出されるようになります。
そのため、一般の赤ちゃんの尿は無色透明ですが、胆道閉鎖症や肝疾患の赤ちゃんは、
尿が濃い黄色や茶色、またはウーロン茶の色みたいに色がついたり、濃くなったりします。
薄い色のうんちや強い黄疸とともに、尿の色も濃くなってきた場合は、
一刻も早くかかりつけ医を受診してください。
◆どんな検査をするの?
(1)採血
採血によって、ビリルビンの数値を検査します。
ビリルビンとは、体内で役目を終えた赤血球が死んで、
赤血球の中のヘモグロビンが分解された後の廃棄物です。
ビリルビンの数値(T-Bil , D-Bil)の数値が高いと、肝臓や胆道系に問題がある可能性が高いです。
【参考】Wikipedia:ビリルビン
(2)レントゲン
レントゲンにて、胆のうや胆管の存在を確かめます。
新生児の場合は、レントゲンで診られない場合もあります。
その場合はエコーや、CTでより詳しく検査します。
(3)エコー(超音波)
エコーで胆のうの存在や、胆管の存在を確認します。
胆のうがなかったり、萎縮していたりすると、確認できないため病気がも疑われます。
(4)CT(コンピュータ断層撮影)
放射線などを用いて、体を走査し、その結果をコンピュータで視覚的に分析する検査です。
X線を使ったり、MRI(核磁気共鳴)など、用いる技術によって呼び方はいろいろあります。
(5)胆道造影シンチグラフィ(胆道シンチグラム)
放射性物質を体内に投与し、時間を追って、造影していく検査のことです。
主に腫瘍や、臓器を調べる時に使う検査です。
胆道造影では、肝臓胆道で吸収される放射性物質を注射し、
その放射性物質を機械で時間を追って検出します。
赤ちゃんは大抵麻酔や睡眠剤を投与され、安静にして検査を受けます。
これによって、胆のうや胆道の存在がある程度確認できる場合もあります。
(6)肝生検
肝臓に針を刺して組織や細胞を採取したり、
手術中に肝臓を少し削って、顕微鏡で細かく観察する検査です。
血液検査や超音波検査、CT検査とは違い、
肝組織を直接観察できるので、最も確実な検査法の一つとされています。
ただ、リスクも伴う検査なので、赤ちゃんにはあまりされません。手術中にする事が多いです。
(7)十二指腸液検査
鼻からカテーテルを十二指腸まで通し、 腸液を採取して、胆汁が分泌されているかを検査します。
そのため、検査前と検査中は絶食します。
【もっと詳しく知りたい方は▶】肝ったママじゃーなる:胆道閉鎖症の検査
◆胆汁ってどんな働きするの?
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胆汁は肝臓で作られ、胆管を通って胆のうに貯まり、
食事をすると胆のうが収縮して、腸へ胆汁が流されます。
胆汁は食物の中の「脂肪」を分配し、
吸収しやすくするはたらきがあります。
胆汁は「胆汁酸」と「胆汁色素」に分けられます。
「胆汁酸」は脂肪を小腸で吸収されやすいように働きかけます。
そしてこの胆汁酸は小腸でまた吸収され、肝臓に戻されます。
「胆汁色素」は破壊された赤血球から出来たヘモグロビンのうち
ヘムという成分が肝臓でビリルビンに変化します。
このビリルビンはうんちの色にもなり、便によって排泄されます。
肝臓の病気などで胆汁が排出されないと、肝臓の中に溜まっていき(うっ滞)、
やがて肝臓が硬くなってしまいます。これを胆汁うっ滞性肝硬変といいます。
また、腸へ流れる胆汁が不十分だと、腸内の食物の脂肪分が体内にうまく吸収できなくなります。
そうなると「脂溶性ビタミンの吸収障害」になり、ビタミンK欠乏症などになります。
【もっと詳しく知りたい方は▶】肝ったママじゃーなる:胆汁のはたらき
◆うんちが白っぽくなるって聞いたけど…
胆道閉鎖症は、胆汁がうまく腸まで流れないので、色の元となる胆汁のシャワーを浴びられません。
そうすると、便の色が「薄く」なります。
よく、育児雑誌での赤ちゃんの病気特集では、「灰白色の便」や「白い便」と書かれてますが、
胆道閉鎖症の子どもの親の経験から言わせてもらいますと、「厳密には」不正確です。
実際閉鎖の状態も肝内や肝外で完全に閉鎖している子もいれば、
狭くなり、微かに胆汁が流れている子もいます。
また、胆管が閉鎖していく時期は赤ちゃんそれぞれで、
生後すぐに閉じる子もいれば、徐々に閉じていく子もいます。
そのため、色のない「灰白色便」や「白っぽい便」ではなく、
薄っすらと色がついている便のことが多かったり、
徐々にうんちの色が薄くなっていく子どもも多いのです。
どのような色の便が異常なのか?
2012年4月以降の母子手帳をお持ちの方は、収載されている便色カードを参考にして下さい。
2012年3月以前の母子手帳をお持ちの方は、こちらをご参考ください。
【参考】便色カード
【もっと詳しく知りたい方は▼】
肝ったママじゃーなる:赤ちゃんのうんち〜胆道閉鎖症の子って、白い便なの?
胆道閉鎖症の子うんちの色は、かならずしも「白っぽい便」とは限りません。
胆道閉鎖症の子の親のうんちに対する体験談も合せて、ご覧下さい。
【参考】肝ったママじゃーなる:お母さんから見たウンチの色